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第12話 敵意の込められた視線

last update Huling Na-update: 2025-04-29 11:31:25

 学園に到着して馬車から降りると早速ジョンに尋ねた。

「ねぇ、私は何年何組なのかしら?」

するとジョンは溜息をつく。

「何故そういう大事なことを今頃尋ねるのですか? 普通記憶が無いのでしたら前日には確認をとるものではありませんか?」

確かに言われてみればそうかもしれないけれど……。

「だ、だって……校舎を見れば記憶が戻るかもしれないと思ったのよ……」

「ご自分の部屋を見ても、鏡でご自分の姿を確認しても何一つ思い出せなかったのに、今頃校舎を目にして記憶が戻ると思ったのですか? 甘い考えですね」

きっぱり言い切られてしまった。だけど私にだって言い分がある。何もそんな言い方をしなくてもジョンの方から私のクラスを教えてくれたっていいようなものだと思った。しかし、唯一私の今の所一番? の理解者である彼の機嫌を損ねたくないので、ここはグッと我慢した。

「そうよね……言われてみればその通りだったわ……それで私は何年何クラスなの?」

「ユリアお嬢様は3年Cクラスです。校舎はあの大きな時計が取り付けられているのと同じ建物で3階にあります。あ、ちなみに私も同じクラスに編入することになっていますからね」

「……」

私はじっとジョンを見る。

「何ですか?」

「……今更、学生に戻るの嫌じゃない? それよりも先生になってこの学園に入って来た方が良かったのじゃないのかしら?」

まさか26歳にもなって学生に戻るなんて。私だったら折角学校を卒業して社会に出られたと言うのに、もう一度高校生をやり直すなんて絶対に嫌だけど……。

「生徒達に授業を教える? 冗談じゃありません。そんなことをしたらサボれないじゃないですか」

「サ、サボるって……」

「私は頭脳も優秀ですからね、今更誰かに教えを請うつもりも、教えるつもりも毛頭無いですから。私がこの学園に通うのはあくまでユリアお嬢様の護衛の為です」

「あ……そ、そうなのね」

「それでは私は職員室に行ってきますが……先程も言っていた通り、学園内では対等な口を聞かせてもらいますからね」

「ええ、いいわよ」

するとジョンはニヤリと不敵な笑みを浮かべった。

「それじゃユリア。また後でな」

そしてクルリと背を向けると、恐らく? 職員室のある方角へと行ってしまった。

「そ、それにしても……何て変わり身の早さなのかしら…」

呆然としていると、私のそばを大勢の学生たちが通り過ぎ
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